2012/07/11

中国の近未来とウォーラーステイン

「チャイナ・ジレンマ」「脱・中国論」の、特に右派と左派の路線対立 を扱った辺りを読みながら思ったこと。
「イデオロギー闘争の両サイドは、今に至っても、結局は毛沢東VS鄧小平なんだ。(中略)毛沢東は大躍進や文化大革命など極左路線を歩んで、中国の発展を大幅に後退させた。鄧小平は幾度にもわたる失脚を乗り越えて、改革開放を唱え、市場経済を中国にもたらした。両者の違いは歴然としている。(中略)共産党首脳部、そしていまだに存在する長老はたちは、この対立の視点から闘争を眺めている。そして、問題は、2012年という政治の季節を前にして、毛沢東思想が明らかに優勢を占めていることだ」(『脱・中国論』p95)

毛沢東思想が支持を得てしまう要因としては、社会矛盾とか貧困を前にした人々が「昔は貧乏だったけど、みんな平等でよかったな~」と思ってしまうこともあるそうな。ちょっと「三丁目の夕日」を連想してしまったが。対して六四でやっちまっている鄧小平は右派にとっても微妙な存在で、それが右派の困難さにもつながっているらしい。

一方で、ネットでのフリーダムな言論の美味しさを(必死に統制はされているけれども)人民は知ってしまいつつある。人民による意思決定の欲求は徐々に強くなると思うべきで、対立の内圧は高くなるんだろうなぁ。



時に、この左傾する首脳部と自分たちの意思決定権を要求する人民の対立は、「入門世界システム分析」で言及された「自由主義」vs「急進主義」の図式に近似するんじゃないかね。個人的にはそんなスケールの大きな抗争が間近で起きるのは、面倒この上ないので勘弁して欲しいけどねぇ。

ちなみに、「入門世界システム分析」は近代世界システムの歴史、近代世界システムにおける社会科学史、筆者の自分史を合流させながら、政治的意思決定に関する思想の変遷と分布を語り、近未来に訪れる世界システムの崩壊と次の世界システム成立に向けて、「(君の信じる)自由のために戦え」と路線対立のないアジテーションに帰着する傑作。

「(君が信じる)自由のために戦え」ってアメリカで主張したら、右翼も左翼もなく賛同されるんじゃないかねぇ。

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